特集

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RN THE FUTURE PROJECT
長期ビジョン策定記念座談会

「笑顔」の実現に必要なものとは

りんかい日産建設が掲げる長期ビジョンのSmile RiNnovationのロゴ

りんかい日産建設が2024年に策定した長期ビジョンは、社内プロジェクトから誕生しました。本記事は、その主要メンバーと3名の役員が集まり、プロジェクトでの議論内容や、ビジョン実現に必要なものについて話し合った内容をまとめたものです。ファシリテーターは、2021~2023年に実施した「SDGs勉強会」の講師を務めた岸和幸先生にお願いしました。

りんかい日産建設株会社 代表取締役社長 永尾 秀司の写真

代表取締役社長

永尾 秀司

[ファシリテーター]
キシエンジニアリング株式会社 代表取締役
東京都市大学
「ひらめき・こと・もの・ひと」づくり
プログラム 特任教授

岸 和幸

キシエンジニアリング株式会社 代表取締役 兼 東京都市大学・「ひらめき・こと・もの・ひと」づくりプログラム 特任教授 岸 和幸の写真

長期ビジョン策定プロジェクト

「長期ビジョン」の内容を、実現可能性があり、社員がその内容に納得・共感できるようにするため、当社では多くの社員の声に耳を傾けることにしました。具体的には、30代〜50代前半の管理職を中心に「策定プロジェクト」を立ち上げ、議論を重ねました。
このプロジェクトは2023年10月に、経営企画部長(現:東京支店副支店長)・関口文康をプロジェクトリーダーとして結成しました。所属部門の異なる社員4~5名からなる3つの分科会を編成し、それぞれ合計6回のミーティングを実施。そして2024年3月末、各分科会が作り上げた案を統合し、経営者・役員の意見を反映したのが、長期ビジョンです。

[プロジェクト統括]
東京支店副支店長

関口 文康

東京支店副支店長 関口 文康の写真

第1部:分科会での議論内容

各リーダーが、分科会で考えた長期ビジョン素案の内容や、見えてきた目標・課題・気づきなどを具体的に報告し、その内容に対して役員が質問やコメントをしました。

[分科会1]

酒井 保和

第1部分科会1の発表者 酒井 保和の写真
取締役専務執行役員 事業統括本部長 向井 達典の写真

取締役専務執行役員
事業統括本部長

向井 達典

分科会 1笑顔と生産性向上の追求で弱みの克服を

─ 岸 : 分科会1ではどんな長期ビジョンを考えたのでしょうか。
─ 酒井 : 当社の経営理念「人・社会・環境との共生」から3つのキーワードを導き出しました。「人」には「ウェルビーイング」が対応します。幸福度・満足度の高い状態です。「社会」は「ソリューション」、社会課題などの解決と提案型営業です。そして「環境」は「ブランディング」、海上土木・陸上土木・建築の3分野で事業を展開する当社の特色を生かして環境面にコミットすることを意味します。
また、経営理念には「人の笑顔を第一に考えます」とあります。この「笑顔」という要素を大切にしたいと私たちは考えました。人が笑顔になるには、豊かさやゆとりが欠かせません。そのためには営業利益を増やす必要があると考え、「10年後の営業利益率7%」を目標に掲げました。
一方で、直近5年間の当社の財務分析をしたところ、一人当たりの生産性の向上が見られないこと、利益率が同業他社・業界平均と比較しても低いことが分かり、ここは当社の弱みと感じました。
─ 向井 : 生産性はどうすれば向上できるとお考えですか。
─ 池浦 : 工事施工に対する取り組みはもとより、間接部門の効率化も重要だと思います。
─ 酒井 : 例えば、生産性を20%高めれば、今まで5人で対応していた仕事が4人でできるようになります。
─ 向井 : 経営の安定化を目指すには、自己資本比率、実質無借金であること、そして利益が多いことが必要ですが、利益率だけでなく利益額も重要です。利益率が上がっても利益額が下がってしまうと、設備投資や技術研究などに投資できなくなります。
─ 酒井 : 両方を追求する必要があるということでしょうか。
─ 向井 : そうですね。そのためには、仕事の仕方の根本的な見直しが必要です。「利益率が同業他社より低い」という話がありましたが、他社と同じような工事をやっているのに、なぜ低いのか、どこに無駄があるのかを徹底的に考え直すべきです。また、社員一人ひとりが日々の業務に「やりがい」を感じていることも大切だと思います。それだけで、生産効率が10%上がるかもしれません。どうしたらいいか、一緒に考えていきましょう。
─ 岸 : 「笑顔」の多い職場になれば、社員のやりがいも高まるのではないでしょうか。ぜひ取り組んでいただきたいですね。

分科会 2部門の壁をなくし、変革・挑戦できる企業へ

[分科会2] 発表者

川田 弘一郎

第1部分科会2の発表者 川田 弘一郎の写真
取締役専務執行役員 管理本部長 村崎 善道の写真

取締役専務執行役員
管理本部長

村崎 善道

─ 岸 : 続いて分科会2の発表をお願いします。新規事業のアイデアも盛り込まれたそうですね。
─ 川田 : はい。技術継承、DX、そして新規事業開発の三点を重視しました。
まず技術継承ですが、ベテラン社員が持つ技術を次の世代に継承するために、人材開発部門が必要と考えています。
DXについては、社内でより浸透させるため、方針や目標を明確化する必要があります。
最後に新規事業ですが、当社が保有する船舶を利用した海洋ゴミの回収事業に挑戦してはどうかと思っています。
─ 村崎 : 新規事業のアイデアを、もう少し詳しく説明してください。
─ 東川 : 海岸のゴミは簡単に拾えますが、岩礁などに滞留したゴミは回収が難しいそうです。それなら当社の作業船を使えばいい、というのが発想の出発点です。ただし具体的なプランはできていません。
─ 村崎 : 土木も建築も、自然環境を相手にする仕事です。現場で働く方々には、具体的な知恵があるかもしれません。彼らに意見を求めるなど、新しい発想を積極的に取り入れると具体化できるかもしれませんね。
─ 岸 : 海洋ゴミ回収、面白いアイデアですね。私の知り合いに宇宙ゴミの回収を実用化した企業のエンジニアがいます。実用化は無理と言われていましたが、他分野の知見も集めることで成功できたそうです。
─ 村崎 : プロジェクトで、気付きや課題はありましたか。
─ 川田 : メンバーはみな所属部門が違うのに同じような悩みを持ち、その解決・改善に真剣に取り組んでいることがわかりました。解決手法などを部門間で共有して合同で解決できれば、効率化にもつながると思います。また、現在は部門間に壁があるように感じます。壁をなくすために、ジョブローテーション(定期的な配置転換)が必要ではないでしょうか。
─ 村崎 : お話の内容に「変わらなければ」という意志の強さを感じますね。当社は近年ジョブローテーションをあまり行ってこなかったため、技術が属人化して次世代に継承できにくくなっているのではという課題を抱えています。慣れた人間が慣れた場所で業務を行うのが当然になっていました。つまり、変えるべきことは目の前にあるわけですね。今は自分でそれに気づき、動くことが大切ではないでしょうか。他者を変えるのは難しくても、自分自身は変えられる。そんな意識を持って行動することで、10年後は大きく変わると思います。

分科会 3多様なニーズに応える「Smile RiNnovation」

[分科会3] 発表者

磯野 博志

第1部分科会3の発表者 磯野 博志の写真

─ 岸 : 次に、分科会3の発表をお願いします。
─ 磯野 : 私たちはまず当社の経営理念にある「人」と「笑顔」が最重要キーワードだと考え、全社員が笑顔でウェルビーイングな状態にあることを10年後のビジョンとしました。経営理念には「人・社会・環境」の3要素がありますが、社会や環境に影響を与えるのは人と感じ、「人」を軸にしました。そして「人」が笑顔でなければ能力は発揮できません。イキイキと能力が発揮でき、笑顔で働ける会社には自然と人が集まり、担い手を確保しやすくなりますし、社内の横断連携もしやすくなり、生産性も向上するはずです。
─ 永尾 : 笑顔が大切、その通りだと思います。しかし笑顔になるのは難しいですよね。いきなり「笑顔になれ」と言われても普通はできません。自然に笑顔になるには、何からスタートすべきだと思いますか。
─ 磯野 : 「会話」や「あいさつ」でしょうか。
─ 永尾 : 私もそう思います。出社時に「おはよう」とあいさつするのは、明日からでもできますね。よいコミュニケーションは、小さなことの積み重ねから生まれると思います。また、役職や立場にかかわらず自分の意見をしっかり主張することも大切です。これまで当社はトップダウン型の指示に従っていればいいと考える傾向があったかもしれません。しかし今後は、一歩前に出る気持ちを持ってほしいですね。
─ 岸 : 分科会3では、大変魅力的なキャッチフレーズが生まれたそうですね。
─ 磯野 : 先ほど説明した内容を一言で言い表したのが、杉山サブリーダーが考案した「Smile RiNnovation」という造語です。「刷新(Renovation)」と「革新(Innovation)」を組み合わせました。これらによって当社が「建設はひとづくり 笑顔のりんかい日産建設」になるというのが、私たちの考えた長期ビジョン案です。
─ 永尾 : 「Smile RiNnovation」はとてもいい言葉ですね。「R」はりんかい、「N」は日産を示していて、2社が合併して現在のりんかい日産建設になったという歴史も、うまく表現されていると感じました。また、RとNの間には小文字の「i」がありますね。
─ 杉山 : 「私・私たち」そして「愛」という意味です。デザイン化されたロゴは筆記体になっていて、RとNがつながっているように見えます。
─ 岸 : 笑顔が人や企業をつなげるというのは、とても共感できますね!